提言書 |
島根県情報産業協会は、情報技術の開発および利用促進など情報化の基盤整備を通じて情報産業の振興を図り、それにより島根県の経済発展に寄与することを目的としています。 今年の島根県の調査データにも、県内から県外へ流出する学生の割合は、大学生82.4%、高専生75.0%、高校生41.6%と示されるように、IT技術者として嘱望されている高学歴ほどその傾向が顕著であります。 このような憂慮すべき県内の動向に対して当協会でも若年労働者の確保やUIターン施策に対して日々力を注いで参りましたが、県外流出の傾向は阻止できません。こうした若年のIT技術者を確保するためには、 「情報産業の振興による雇用拡大」 「人材育成システム」 の施策を官民一体となって実施することが有効と思慮されます。 このような考えに立ち島根県の情報産業による産業振興策について提言します。 平成19年5月16日 (社)島根県情報産業協会 会長 多久和 厚 |
東京一極集中化が進むなかで県内の若年労働者が県外へ流出する傾向は年々顕著になり、現状では流出を止めることは困難であります。このような傾向に歯止めを掛ける方策として、技術者の職場確保、即ち島根県内の企業育成・企業支援が必要と考えます。
島根県においては他県に先駆けて情報産業のインフラである高速通信網の整備を実施されました。また、長期的視点に立って新産業創出プロジェクトを立上げ、特に『ネオたたら構想』として地場産業での「ものづくり」を推進されました。
こうしたプロジェクトにはバーチャルリアリティ技術開発が組み込まれているものの、既存の情報産業に対する波及効果は充分ではありません。人材の流出が年々増加傾向にある中において、雇用が増加傾向の情報産業を重点的に育成するプロジェクトを設置することが急務と考えます。
また新年度には産官学による「しまね産業活性化会議」の設置が計画されていますが、こうした施策により情報産業を視野に入れた産業振興策を打ち出されることを強く要望するもので、当協会においても積極的に参画する所存であります。
申すまでもなく情報産業は成果物が知的財産として地元島根県に蓄積されることとなります。この財産を将来に亘り拡大再生産することで島根県の財政に大いに貢献するものと考えます。
日々進歩する業界とりわけ情報産業の技術者には、現場において即戦力となる技術力を求められています。しかしながら地元における技術者は「質」「量」とも充分でなく、これを満たすために企業ごとに人材教育をおこなっています。しかしながら企業単位に実施する人材教育は教育規模、教育レベルの面から非効率であり、求められるスキルも充分ではありません。
そこで島根県が中心となり、「新規採用者への現場教育」「中堅社員向けの教育訓練」を企画し、県内に残された人材や県内学生のスキルを上げることが有効と考えます。
島根県内企業で特に求められている人材として
(1)プログラム開発者のうちOSS技術者
(2)デジタルコンテンツ技術者
(3)組込みソフトの開発技術者
(4)プロジェクトマネージャ
などであり、こうした技術者を育成することが急務であると考えます。
人材育成の実施にあたっては当協会などとの連携体制により、島根県が保有している施設、例えばテクノアークしまねなどの施設を活用し、県内県外から広く教育スタッフを集約させて「スキルレベル」「講習態様」において雇用に直結するカリキュラムを組むことで効果的な人材育成が期待できるものです。地域の財産である技術集団を島根県内に確保することにより、産業基盤を確立し、地域振興を図ることができるものと確信いたします。
(以上)